備前伝の隆盛

備前伝には近在の吉岡、畠田、和気、そして、長船にも有能な刀工集団が誕生する。特に、光忠を始祖とする長船派は、長光、景光、兼光といった天才を輩出した。

「備前伝」といえば、即ち長船と称されるほどの最大流派になっていく。後鳥羽上皇が各地から召集し、月番で作刀する「御番鍛冶」12名のうち、10名が「備前伝」の出身であった。

いかに「備前伝」が隆盛を誇ったかを物語っている。「備前伝」の作風は、茎の上から反りが入る腰反りが典型といえる。

地鉄は杢目交じりの板目肌であり、刃文は匂いによる丁子乱れや互の目乱れ、鎬に沿って乱れ映りがある。刃縁には細かな沸が入っており、帽子は刃文に従って乱れ込み、返りは浅い小丸になる。