茶道千家流の始祖、千利休は、茶室を作る際に、その入り口をしゃがみこむほど小さく誂えたのは、人々が日本刀を帯刀したまま茶室に入ることを拒んだからなどと言われているそうです。茶室には帯刀したままの入室は許されなかった武士たちが、護身用として持ち込みが許可された木刀があります。茶室刀(ちゃしつがたな)などとも言われ、その姿は短めの靴べらのような形をしておりますが、有事の際にはこん棒などの武器の役割を果たしてくれたのかもしれません。実際にこういったものが、茶室での争いのなかで使われたのかは、その事実を知らせる資料を見つけることができませんでしたが、茶室刀の外観は武器というよりは、どちらかというと工芸品のような美術品のような美しさが際立っております。茶室への帯刀許されなかった武士たちが心寂しいが故に、このようなものを誂えたのでしょうか。人々から褒め称えられ歴史的にも優れた日本刀を「名物」と呼ぶのは、茶道の名器をそのように言い表したからであるなどとも言われているそうです、茶道と日本刀はどうやらとても近しい関係であったようです。現代におきましては、「名物」は日本刀や茶器などだけではなく、お料理や土産物、人物にまで、あらゆるものに「名物」が付くものが探し出せますが、まさか茶器や日本刀が語源であるとは思いもよらない事実であります。